肝・胆・膵グループ

肝臓グループ

 肝臓疾患に対する手術を主に行っています。肝臓の手術は侵襲(負担)の大きな手術があるため、なるべく身体への侵襲を少なくすることに留意し、診療を行っております。
当グループでは、日本内視鏡外科学会・技術認定医および日本肝胆膵外科学会・高度技能専門医が全ての手術を担当しており、安全性と質の高い手術を心掛けております。また、これまでに腹腔鏡を用いた肝臓疾患の手術を積極的に行っており、2019年4月までに症例数は265例に達しています。安全性と根治性を第一に考慮し、術式選択を含め患者さんに負担の掛からない手術方法を提案させていただきます。術前に3次元画像解析システム“SYNAPSE VINCENT”3D-CTを使用し、手術のシミュレーションに用いています。さらに最近では、切除するべき腫瘍の場所を正確に把握、認知するナビゲーションシステムとして、ICG蛍光内視鏡システム“PINPOINT”を導入しました、これによって、腫瘍までの正確な距離や肝切除範囲の同定に役立っています。2018年までの過去10年のデータにおいては、年間53~84件の肝切除術が行われ、術後在院日数(手術から退院までの日数)の中央値は10日間となっております。

当グループの対象となる主な疾患は下記のとおりです。

・原発性肝癌(肝臓癌)

肝臓から発生した癌です。肝細胞に由来する肝細胞癌と肝内胆管に由来する肝内胆管癌が代表的な疾患です。切除可能な場合は手術を行うことが推奨されています。肝予備能や切除後の肝容積、腫瘍の大きさや位置に応じて、肝臓の切除範囲や、どのような方法(開腹手術や腹腔鏡手術)で手術するかなど、適切な手術方法を検討し行っています。肝細胞癌においては、消化器肝臓内科、放射線科と連携して、ラジオ波凝固療法や肝動脈塞栓注入療法、分子標的薬を使った治療など手術治療以外の治療も行っております。また、初発の肝細胞癌だけでなく、再発症例においても積極的に手術を行っております。特に、再肝切除においては、初回手術が開腹であっても腹腔鏡下手術を検討し、その数は30例に至っております。腹腔鏡下再肝切除術は、拡大視効果によって狭い空間でのピンポイント手術が可能であるため、腹腔内(おなかの中)において、前回手術の癒着を必要以上に剥がす必要がなく、また整容性でも優れており、身体への負担を減らせるものと考えています。

・胆道癌

胆道(胆管や胆嚢)に発生した癌のうち、胆嚢にできた胆嚢癌や肝臓に近い胆管にできた肝門部領域胆管癌が主な代表的な疾患となります。手術方法は肝臓と胆管を含めて切除し、切除した胆管と消化管を繋ぎ(吻合)ます。大きな手術になることがあるため、安全面を第一に、術前の入念な準備と術後管理を行っています。当科では胆道癌で最も重要な手術前診断・評価、内視鏡検査、処置など、手術へ直結する治療(ドレナージ)も行っており、最適な状態・タイミングで最良の手術を受けられるよう心掛けています。

・転移性肝癌(肝転移)

肝臓以外の臓器にできた癌が肝臓に転移したものを転移性肝癌といいます。大腸癌の肝転移や腎臓癌(腎細胞癌)の肝転移などが切除の対象となる代表的なものです。特に根治切除が難しいと考えられる大腸癌の多発肝転移症例には、分子標的薬と抗癌剤による治療も組み合わせて複数回に分けて肝切除を行うなど、症例ごとに適切な治療方法を考えています。また、胃癌の肝転移症例も切除の対象となる場合もあり、切除が望ましいとされる症例には可能な限り肝切除を行っております。前述のように、再肝切除術症例にも積極的にICG蛍光シミュレーションシステムを用いた腹腔鏡下肝切除を行っています。

周術期管理

合併症の発生が少ない安全性の高い肝切除術を行うためには、手術は元より手術前後の管理(周術期管理)が重要です、当科では肝切除術の周術期管理に力を入れており、安全性を高めるために様々な工夫をしております。

① 術前の入念な画像診断 術前に様々な画像診断により、腫瘍の性質、局在、血管等との関係を入念に検討し、数回のカンファレンスを重ねて手術に臨みます。

② 術前処置 肝予備能低下症例に対しては、あきらめずに術前に門脈塞栓術(切除予定部分の血管を詰める)、部分的脾動脈塞栓術(肝予備能改善、血小板増加、門脈圧低下)等で全身状態を改善させます。また食道胃静脈瘤症例には術前に内視鏡で治療します。腹水コントロール、アミノ酸投与による栄養状態の改善等も行い、より良い状態で手術に臨みます。

③ 超音波検査 周術期には主治医が頻繁に超音波検査を施行し、肝臓への血流、切除部周囲の異常をチェックします。頻繁に施行することでトラブルの発生を早期に診断対処できます。

④ 早期離床、経口摂取 術後は早期に離床(歩行)していただきます。早期に離床することは合併症発生の防止につながります。また早期の経口摂取は肝臓への栄養、腸管運動の改善につながり、回復を早めます。

他院で切除が難しいと診断された方も是非ご相談ください。

・肝良性疾患 肝嚢胞水

症状を有する肝嚢胞に対する治療も行っています。肝嚢胞は肝臓の中に水が溜たまる病気ですが、これが大きい場合、他の臓器を圧迫するなどし、腹部の膨満感や痛みなどの症状が出る場合があります。また、嚢胞内出血を起こしたり、感染を合併した場合も治療の適応です。我々は、巨大肝嚢胞に対する治療も積極的に行っており、TANKO(1つの穴で行う)での腹腔鏡下肝嚢胞切除術を行っています。

肝硬変・難治性腹水

肝硬変による難治性腹水(利尿薬などでも腹水の管理が難しい状態)に対する治療(腹腔-静脈シャント術:Denver Shunt)なども行っています。

門脈圧亢進症・食道胃静脈瘤

門脈圧亢進症による食道胃静脈瘤は、近年、内視鏡治療等が発達しコントロール可能となりましたが、時に治療に抵抗、難渋する症例を認めます。当科では難治性食道胃静脈瘤に対してHassab手術(脾臓摘出・胃周囲血行郭清)に代表される外科的処置を腹腔鏡下手術で積極的に行っております。

全国から多数の難治例の御紹介があり、治療後に地元に戻っていただいております。

他施設で難治例と診断された患者様なども含め、セカンドオピニオンもお受けしております。 患者さんにご納得いただける質の高い医療を行っていきたいと考えております。お気軽にご相談ください。

     
肝臓班

胆道グループ

当グループは胆道系疾患を主に担当しています。胆道系疾患とは、肝臓から十二指腸を繋ぐ肝外胆管と胆嚢より発生する疾患です。具体的には良性疾患として、胆石症(胆嚢結石、総胆管結石)や胆嚢ポリープ、胆嚢炎、胆管炎など、悪性疾患として胆嚢癌、胆管癌が主なものとなります。
当院では胆嚢結石症、胆嚢炎対しては、1991年から腹腔鏡下手術を導入し、現在まで3,000例以上を行い患者さんのQOLに貢献してきました。近年は、傷跡の目立たないように単孔式や細径鉗子を導入しております。また、上腹部の手術歴があり、腹腔内の癒着が予想される方でも、条件によっては腹腔鏡手術で行なっております。
総胆管結石に対しては、総胆管の太さにより、腹腔鏡手術のほかに内視鏡による治療(結石の治療)も行なっております。
胆嚢癌、胆管癌に対しては早期診断、早期治療に努め、個々の患者さんの病態に適した治療を肝臓グループ、膵臓グループとともに行なっております。また、非手術治療として胆管ドレナージとステントによる治療を行い、チューブフリーとすることで患者さんのQOLに貢献しております。
閉塞性黄疸、胆管狭窄や拡張など、先天性か結石か腫瘍によるものか原因が不明でも、当グループで、診断から行いますので、患者さまにも早期の治療介入が出来ますので、お気軽にご相談ください。

▶受診を希望される方へ

専門医と技術認定医による安全で的確なチーム医療を提供いたします。

▶医療機関の方へ

黄疸や肝機能障害が認められた時や、CTやエコーで胆嚢の異常、胆管拡張、胆石を疑った時など、即ご連絡ください。予約外でも必ず診察いたします。

胆道班

膵臓グループ

膵臓癌、胆管癌、十二指腸(乳頭部)癌、膵内分泌腫瘍(インスリノーマ、非機能性腫瘍など)、膵嚢胞性腫瘍、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)などに対して、年間80件を超える膵切除術(膵頭十二指腸切除術、膵体尾部切除術など)を行っています。特に腹腔鏡下手術(腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術、腹腔鏡下膵体尾部切除術など)に力を入れ、平成31年4月現在その症例数は総計340例を超え、全国的に最多のハイボリュームセンターとして認知されております。日本内視鏡外科学会・技術認定医および日本肝胆膵外科学会・高度技能指導医/専門医が全ての患者様の手術を担当し、安全で確実性の高い手術手技を提供するよう日々心掛けております。また胆道グループと共に、先天性胆道拡張症に対する腹腔鏡下手術も安全に行っています。
スタッフは、日本内視鏡外科学会および各種研究会(膵臓内視鏡外科研究会、腹腔鏡下胆道手術研究会など)が毎年定期的に行っている手術手技実習セミナーの講師/指導医を務め、膵臓・胆道領域の手術手技・技術の普及にも貢献しております。また、現在まで(平成31年4月)に、国内の56医療施設(大学病院、がんセンターなど)からのべ140名を超える手術見学者(外科医)を受け入れ、閉鎖的ではない開かれた手術を常に実践しております。

「最近のグループ内の主な論文・著書」

  1. 特集 消化器疾患に対する機能温存・再建手術「脾温存腹腔鏡下膵体尾部切除術」.  中村慶春,松下晃,古木裕康 他,外科81;585-589,2019.
  2. 特集●これぞ達人の技! 最新の消化器内視鏡外科手術 腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術:Laparoscopic pancreaticoduodenectomy(Lap-PD).中村慶春,松下晃,吉田 寛,消化器外科41臨時増刊号;824-837,2018.
  3. 特集 DP(尾側膵切除術を極める) 腹腔鏡下尾側膵切除術(脾摘を伴う):非浸潤性腫瘍に対する標準術式.中村慶春,松下晃,吉田 寛,胆と膵39;1229-1232,2018.
  4. 【腹腔鏡下膵体尾部切除の手術手技】 腹腔鏡下膵体尾部切除に必要な外科解剖.松下晃,中村慶春,神田知洋 他,手術72;1699-1706,2018.
  5. 膵中央切除術.松下晃,中村慶春,神田知洋 他,臨床外科73;1008-1013,2018.
  6. Experience‑based surgical approach to pancreatic mucinous cystic neoplasms with ovarian‑type stroma. Kang CM, Matsushita A, Hwang HK, Matsuda Y, Kim H, Nakamura Y, Lee WJ. Oncology Letters. 15:2451-8, 2018
  7. Learning curve and surgical factors influencing the surgical outcomes during the initial experience with laparoscopic pancreaticoduodenectomy. Nagakawa Y, Nakamura Y, Honda G, et al. J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2018 Oct 6. doi: 10.1002/jhbp.586, 2018 [Epub ahead of print]
  8. Difficulty scoring system in laparoscopic distal pancreatectomy. Ohtsuka T, Ban D, Nakamura Y, et al. J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2018 Aug 17. doi: 10.1002/jhbp.578, 2018 [Epub ahead of print]
  9. International Summit on Laparoscopic Pancreatic Resection (ISLPR) "Coimbatore Summit Statements". Palanivelu C, Takaori K, Abu Hilal M, Kooby DA, Wakabayashi G, Agarwal A, Berti S, Besselink MG, Chen KH, Gumbs AA, Han HS, Honda G, Khatkov I, Kim HJ, Li JT, Duy Long TC, Machado MA, Matsushita A, Menon K, Min-Hua Z, Nakamura M, Nagakawa Y, Pekolj J, Poves I, Rahman S, Rong L, Sa Cunha A, Senthilnathan P, Shrikhande SV, Gurumurthy SS, Sup Yoon D, Yoon YS, Khatri VP. Surg Oncol. 2018 Mar;27(1):A10-A15. doi: 10.1016/j.suronc.2017.12.001. Epub 2017 Dec 27.
  10. 標準治療「腹腔鏡下膵体尾部切除術-チーム力の向上でより安全で低侵襲の手術が施行可能に」.中村慶春,松下晃,勝野暁 他,ライフライン21 がんの先進医療 2017 Jan. vol. 24.
  11. 「内視鏡手術におけるmesopancreasの切除-腹腔鏡下に膵頭神経叢を適切に把握するための術野展開法について」.中村慶春,松下晃,勝野暁 他,胆と膵38;99-102,2017.
  12. 拡大視による局所微細解剖アトラス「腹腔鏡手術時代の膵頭部解剖-膵頭神経叢を適切に把握する」.松下晃,中村慶春,勝野暁 他,手術(臨時増刊号)71;691-6, 2017.
  13. Minimally invasive pancreatoduodenectomy. Kendrick ML, van Hilst J, Boggi U, de Rooij T, Walsh RM, Zeh HJ, Hughes SJ, Nakamura Y, Vollmer CM, Kooby DA, Asbun HJ. HPB(Oxford) ;19(3):215-224, 2017.
  14. Subsequent biliary cancer originating from remnant intrapancreatic bile ducts after cyst excision: a literature review. Mizuguchi Y, Nakamura Y, Uchida E. Surg Today. 47:660-7, 2017
  15. エキスパートに聞く! 高難度内視鏡外科手術のコツ「腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術」中村慶春,松下晃,勝野暁 他,消化器外科39;1555-63,2016.
  16. 新アトラスで学ぶ達人の手術「腹腔鏡下膵体尾部切除術」.中村慶春,内田英二.消化器外科(臨時増刊号)39;841-9,2016.
  17. イラストでみる最新の胆・膵消化管吻合術「腹腔鏡下膵切除術における胆道消化管吻合,膵消化管吻合」.中村慶春,松下晃,水口義昭 他, 胆と膵37;291-5,2016.
  18. Clinical outcomes for 14 consecutive patients with solid pseudopapillary neoplasms who underwent laparoscopic distal pancreatectomy. Nakamura Y, Matsushita A, Katsuno A et al. Asian J Endosc Surg. 9 : 32-6, 2016.
  19. Study on laparoscopic spleen preserving distal pancreatectomy procedures comparing splenic vessel preservation and non-preservation. Yoshiharu Nakamura, Akira Matsushita, Yoshiaki Mizuguchi et al. Transl Gastroenterol Hepatol, doi: 10.21037/tgh.2016.03.24, 2016.
  20. JSES GUIDELINE Gastroenterological Surgery: The gallbladder and common bile duct. Tokumura H, Iida A, Sasaki A, Nakamura Y, Yasuda I. Asian J Endosc Surg. 9 : 237-249, 2016.
  21. Modified laparoscopic biliary enteric anastomosis procedure using handmade double-armed needles. Mizuguchi Y, Nakamura Y, Uchida E. Asian J Endosc Surg. 9: 93-6, 2016.
  22. Suppression of STAT5b in pancreatic cancer cells leads to attenuated gemcitabine chemoresistance, adhesion and invasion. Sumiyoshi H, Matsushita A, Nakamura Y, et al. Oncol Rep. 35: 3216-26, 2016.
  23. Mitotic index and multipolar mitosis in routine histologic sections as prognostic markers of pancreatic cancers: A clinicopathological study. Matsuda Y, Yoshimura H, Ishiwata T, Sumiyoshi H, Matsushita A, Nakamura Y, Aida J, Uchida E, Takubo K, Arai T. Pancreatology. 16(1):127-32, 2016.

胆道班

日本医科大学付属病院

吉田 寛 大学院教授
真々田裕宏 病院教授
中村慶春 准教授
松下 晃 講師
吉岡正人 病院講師
清水哲也 病院講師
神田知洋 病院講師
青木悠人 助教
近藤亮太 大学院生
金谷洋平 大学院生
助川 誠 大学院生

日本医科大学多摩永山病院

横山 正 講師
平方敦史 講師
髙田英志 助教

日本医科大学千葉北総病院

川野陽一 講師
山初和也 病院講師
上田純志 病院講師

日本医科大学武蔵小杉病院

谷合信彦 病院教授
水谷 聡 講師
古木裕康 助教