主な病気とその治療
鼠径ヘルニア(脱腸)の患者さんへ「鼠径ヘルニア根治術」
鼠径ヘルニアってどういう病気?
ヘルニアとは、体内の臓器が本来あるべき部位から飛び出した状態のことを指します。その中でも消化器外科領域におけるヘルニアとは、腹部に先天的もしくは後天的に弱いところから腹腔内容物(腸管や脂肪等)が飛び出すことをいいます。とくに、足の付け根の鼠径部に生じたものを鼠径ヘルニアといいます。先天性の場合、乳児期から発症します。後天性の場合、過度に腹圧のかかる状態が多い方や、加齢により腹壁が弱くなるために発症します。
鼠径ヘルニアの種類は?
鼠鼠径ヘルニアの生じた部位により、以下の3種類に大きく分類されます。
① 外鼠径ヘルニア
② 内鼠径ヘルニア
③ 大腿ヘルニア
鼠径ヘルニアの症状は?
鼠径部が膨らんで気づく方がほとんどです。その他にも違和感や痛みを訴える方もいます。立っていると鼠径部の膨らみが目立ち、横になると目立たなくなる方が多いです。ご自身でお腹の中に戻すことも可能ですが、弱くなった部位が改善するわけではないので症状は繰り返してしまいます。
鼠径ヘルニアの治療は?
鼠径部ヘルニアは物理的な要因により生じる疾患であるため、自然治癒や薬による治療法はありません。根本的な治療には、原則として手術が必要です。
手術しないで放置するとどうなるの?
手術をしないで放置することで生じうる不都合には大きく分けて3つあります。
① 鼠径ヘルニアの巨大化
鼠径ヘルニアの脱出を繰り返すうちにヘルニアは大きくなり、見た目の問題や下着を着用する際に邪魔となることなどがあります。
② 慢性的な疼痛
初期症状として出現する痛みも、根本の改善がなければ治まることはないと考えられます。
③ 嵌頓
腸が出たり入ったりを続けている間は問題ありません。しかし、嵌頓といって脱出した腸がはまり込み、お腹の中へ戻らなくなると腸管の血流障害が発生し、そのまま放置してしまうと、最悪の場合、腸管が壊死してしまうことがあります。その場合は腸切除を必要とする場合があります。また、嵌頓はヘルニアの大きさに関わらず生じますし、その発症を予測することは難しいとされています。
以上の点より、ヘルニアと診断された場合は原則的に手術をすることをお勧めしています。
手術の方法は?
当科では腹腔鏡を用いた方法と鼠径部切開法という2つの方法を用いて手術を行っています。
① 腹腔鏡手術
臍に12mm、その両脇に5mmの孔を開け、お腹の中に内視鏡を入れ、テレビモニター上に映し出された映像を見ながら手術を行います。お腹の内側からヘルニアの原因となっている弱くなっているところをメッシュと呼ばれる網状の人工繊維で塞ぐことでヘルニアが脱出しないようにします。
② 鼠径部切開法
鼠径部に4~5cm程度の皮膚切開をおいて行う従来からの方法です。腹腔鏡手術と同様にメッシュを用い、腹壁の弱くなっているところを塞ぐことでヘルニアが脱出しないようにします。
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