主な病気とその治療

閉塞性大腸がんの患者さんへ「大腸内視鏡ステント治療」

閉塞性大腸がんとは?

進行した大腸がんにより腸が詰まってしまう病気です。腸管内に便やガスがたまり,お腹の痛み,張り,吐き気,嘔吐が起きてしまいます。場合によっては腸が破裂してしまい命に関わることもあります。多くの閉塞性大腸がんの患者さんは,排便時の出血,下痢・便秘を繰り返すなどの大腸がんによる症状を自覚していても医療機関を受診されずにいて,閉塞性大腸がんに至ってしまいます。閉塞性大腸がんになってしまう前に,早期に診断し治療することが大切です。

大腸ステントとは?

閉塞性大腸がんの患者さんに対しては,これまで緊急手術で人工肛門(ストマ)を造設するのが標準的でした。しかし,閉塞性大腸がんの患者さんは,全身状態が悪いことも多く,緊急手術を行うことで術後に感染症などの合併症が起きることが多いと言われています。また,人工肛門造設後の患者さんは,生活の質(Quality of life: QOL)が落ちてしまうとともに,その管理に特殊なケアを必要とします。閉塞性大腸がんの患者さんに対する負担の少ない治療法として,最近,普及しているのが大腸ステント治療です。大腸ステントは,筒状の形状記憶合金の網(直径20ミリ,長さ10cm程度)で,大腸内視鏡を用いてがん部に留置し,自己拡張力により閉塞部を広げることで腸管の詰まりを解除させます。ステント留置にかかる時間は約30分程度で,通常の大腸内視鏡検査と同じように全身麻酔は必要ありません。

大腸ステント留置後の経過

緊急手術を行った場合,全身麻酔の影響や手術の傷の痛みから回復するのに時間がかかりますが,大腸ステント治療の場合はその直後より症状が改善し,翌日から食事が食べられます。ステント留置後,通常3~5日間で退院できます。大腸ステントは,緩和治療(根治できない場合の症状や苦痛を和らげる治療)目的に永久的に留置する場合と根治手術の前に一時的に留置して,全身状態を回復させることを目的とする場合があります。後者の場合は,ステント留置後約3週間経過した後に根治手術を行います。

大腸ステント留置の成績と合併症

大腸ステント留置の技術的成功率(目的の場所に留置が行えること)は約95%,臨床的成功率(お腹の症状が改善されること)は約92%程度で非常に成功率の高い治療法です。しかし,穿孔(腸に穴が開いてしまうこと),逸脱(ステントがずれてしまうこと),再閉塞(ステントが詰まってしまうこと)などの合併症が起こることがあります。

閉塞性大腸がんの患者さんへ

当科では多くの閉塞性大腸がん患者さんの治療経験があり,患者さんに最適な治療方針を相談して決めさせて頂きます。大腸ステントについて詳しく聞きたい患者さんや他の医療機関での治療法に迷ったりされている患者さんがいらっしゃいましたら,お気軽にお問い合わせください。


主な病気とその治療一覧に戻る